2017年5月20日土曜日

【第710回】『サクセッションプランの基本』(C・アトウッド、石山恒貴訳、ヒューマンバリュー、2012年)

 本書によれば、サクセッションプランとは「継続的に組織の中の将来のリーダーを特定し、リーダーの役割を果たすことができるよう育成するプロセス」(15頁)である。このように捉えれば、企画関連を担う人事パースンの多くは、何らかの形でサクセッションプランに携わっていると言えるだろう。

 もっと言えば、サクセッションプランという枠組みで、人事という業務を捉え直すことによって、私たちが直接部門に対して貢献できる領域を広げることができるのではないだろうか。恥ずかしながら、これまであまり理解していなかったことを自覚させられる、学びの多い書籍であった。

 サクセッションプランを行う上での中核となるコンセプトが19~20頁にまとまっている。これは一つの理念型であるとは思うが、チェックリストとして参照する上でよくままっていて使い勝手がいい。七つの観点を意訳的に箇条書きで記すとしたら、以下のようになるだろう。

(1)組織のトップマネジメントから継続的な支援を受ける
(2)組織の戦略計画と整合させる
(3)多様なメンバーでプランを作成することで、特定のニーズに偏らず組織の真のニーズを織り込むようにする
(4)候補者を特定することだけに用いず、社員が目指すべき方向性を理解できるよう継続的なコミュニケーションを行う
(5)シンプルなプランにする
(6)オープンなコミュニケーションを担保し、社員からのインプットも求める
(7)フォローアップのための測定基準を設定する

 どれも重要な視点である。その上で、最初の二つは人事としてよく留意してきたが、(3)以降は欠落しがちなものであり、個人的には反省させられた。実施フェーズにおける留意点も記載されており、私は特に以下の部分が興味深かった。

 サクセッション・プランニングを天井と考えるのではなく、個人にとっての開発の機会と考えてもらうことにつながる(99頁)


 何らかの重要なポストのサクセッサーを潤沢にすることで、組織を変化に対応できる状態へと強化する。これが組織目線でのサクセッションプランの目的であろう。ここに過剰適応しすぎると、上述したような個人目線での観点が薄れてしまう。気をつけたい観点である。


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