2017年1月3日火曜日

【第662回】『ドラッカーと論語(2回目)』(安冨歩、東洋経済新報社、2014年)

 マーケティングとはセールスを不要にするための行為であると喝破したのがドラッカーの論のハイライトの一つである。顧客を理解することはマーケティングの重要な要素に含まれることは間違いない。しかし、顧客の視点に立とうとして質的・量的な市場調査に安易に委ねることは、ドラッカーの本意と異なるのではないかと著者は警鐘を鳴らす。

 「お客様目線」といった考え方は、自らの身体の及ぶところではない他人の感覚に自分を迎合させることになる。それは、自分の感覚を他人に譲り渡し、「己」を見失うことである。すると、己を知るという過程は消滅してしまう。(kindle ver. No. 1017)

 ドラッカーも孔子も「己を知る」ということこそが、すべての始まりだと述べている。他人にどんなことをして欲しいのかとたずねているようでは、決して「己を知る」ことはできないのである。(kindle ver. No. 1026)

 お客様の視点に立つ前に、自分自身を知るということが重要だとしているのである。もっと言えば、引用箇所の前の部分で、周囲や社会における自分自身をどのように位置付けるかが大事であるとしている部分に注目するべきであろう。

 そうした企業の事例として、ユニ・チャーム社がインドネシアで日本製のオムツを如何にしてマーケットに浸透させたケースをぜひお読みいただきたい。安易な市場調査などは不要であるばかりか時に害を為すものであり、ステイクホルダーの中で相対的に自社の製品の強みを見出すことの重要性を理解できるだろう。


 これは必ずしも企業をはじめとした組織に顕著なものではなく、私たち個人にも当てはまるのではないか。自分自身の視点から強みを見つけようとするばかりではなく、他者・組織・社会といった具合に一歩か二歩ほど引いた視点に立ってみて、自分自身の強みを定義し位置付けることが重要なのである。そうした意味での社会的かつ主観的な強みに自覚的にフォーカスすることが、自分自身と共に周囲の人々をゆたかにすることにつながるのではないだろうか。


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