2016年5月6日金曜日

【第573回】『経営戦略を問いなおす』(三品和広、筑摩書房、2006年)

 再読してみて、非常に面白く読んだ。戦略に関する三つの誤解をまとめた第一章の冒頭で、三つの節を要約した以下の箇所が秀逸である。

 第一節は、戦略の汎用性に疑義を唱えます。本当の戦略は、戦略の限定性を認識するところから始まる、そんなストーリーです。
 第二節は、成長戦略という概念を俎上に載せます。本当の戦略は、売り上げを伸ばすことを目指すものではなく、売上を選ぶもの、そんな視点です。
 第三節は、戦略に客観性と普遍性を求める発想を打ち砕きます。本当の戦略は主観に基づく特殊解、という話です。(20頁)

 まず、戦略は普遍的なものではないとしている。これはよく考えてみれば当たり前のことで、普遍性のあるものが戦略であるとすれば、戦略を立てることに意味はなくなる。なぜなら、普遍的であるということは、他社と比較して差異がなくなってしまうことを意味するからである。

 次に、戦略とは売り上げを選ぶものであるということが指摘される。これは、売り上げを伸ばすのではなく利益を伸ばすことが企業にとってより大事であり、そのためには投資対効果の優れない売り上げは追わないことが求められる。

 最後に、そうした決断をするためには、客観的な分析だけでは普遍的なものしか生まれない。客観的な分析も必要ではあるが、それと同等にもしくはそれ以上に主観に基づいたその企業独自の解の創出が必要なのである。


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