2015年8月30日日曜日

【第479回】『真田太平記(四)甲賀問答』(池波正太郎、新潮社、1987年)

 戦国の時代における人的情報網として暗躍した甲賀忍者。甲賀忍びのグループにおいて、甲賀を出た真田忍びと甲賀忍びとの戦いや駆け引きに焦点を当てながら、秀吉の迷走に伴う豊臣と徳川の微妙な探り合いが忍びの暗躍へと結びつくことが描かれた第四巻である。

 痛みをこらえつつ、お江は、いよいよ生存の自信をもつことができた。
 生きているからこそ、傷むのだ。
 傷むからこそ、癒えるのである。(197頁)

「われら、忍びの者にかぎらず、人という人は、自分のためのみに生くるのではないぞ。おのれの無事を願い、おのれのためにつくしてくれる他の人びとのために生きねばならぬ。生きぬかねばならぬ。これが人というものじゃ」(223頁)

 苦しい時にいかに気力を漲らせるか。それは自分自身のためのみならず、他者のためであるという発言は、特に心に留めておきたい至言である。

「それほどならば、いまのうちに、太閤殿下に謀叛して大坂城を乗っ取り、いさぎよく滅び消えたほうが、まだしもおもしろい。すくなくとも、殿下の朝鮮攻めをふせぐことになろう」(251頁)

 秀吉という人間を愛しながらも、朝鮮出兵の愚を感じ取る真田昌幸。後世の視点から眺めた歴史小説であるために秀吉を悪し様に捉えすぎることは不要であろうが、後世を生きる私たちであるからこそ、歴史から学ぶことこそが必要不可欠であろう。

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