2012年11月11日日曜日

【第122回】Number816「日本最強のベストナイン」(講談社、2012年)


 最近はあまり野球を見なくなったが、日本シリーズだけは毎年見ている。クライマックスシリーズあたりからそわそわして日本シリーズを見るという流れがここ数年で定着しつつあるようだ。そして日本シリーズが終わるとNumberが特集号を必ず出すものだから、どうしても買ってしまう。日本シリーズの各試合の分析がいつも面白く、今回も期待を裏切らない出来であった。

 今年の日本シリーズ特集号の中で興味深く読んだのが杉内俊哉投手へのインタビュー記事である。

 彼をはじめて認識したのは、鹿児島実業のエースとして松坂大輔投手を擁する横浜高校と対峙した夏の甲子園の時である。横浜高校を応援していた身としては、その前の試合でノーヒットノーランを達成した杉内投手は脅威であったが、興奮しながら試合をテレビ観戦したように記憶している。

 その彼が今号のインタビューで述べていることがメンタル面での自己管理についてである。若い頃には「マウンドで自分と戦っていた」と振り返りながら、ピッチングで一番大切なこととして「逃げ道を作る」という独特な表現を用いている。

 ここでの逃げ道とは、他者からの逃げ道ということではないことに注目したい。したがって、打たれたときの言い訳として逃げ道を用意するということではないのである。そうではなく、マウンド上でいたずらにもう一人の自分という幻想と戦わないための工夫であり、気持ちの整理をつける場所を作っておくということなのである。

 その効用として「開き直れれば、気持ちを切り替えることができる」ために「一年を通じて、コンスタントに勝つ」ことに繋がるのである。ただ単に意識を前向きに持つのではなく、一見して後ろ向きに見える意識変容を通じて前向きな行動に着実に結びつけること。こうした高いプロフェッショナル意識に基づいた自己管理術は、ぜひ取り入れたいポイントだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿