2010年12月13日月曜日

【第2回】Newton別冊「わかる時空」(ニュートンプレス、2010年)

数学好きの理科嫌い。高校時代のこのアンビバレンスを解消するために、私は長い間に渡って理科を遠ざけていた。そんな状況を救ってくれたのが科学雑誌「ニュートン」の別冊シリーズである。このシリーズは複雑な数式を抜きにして、概念的に把握させてくれる。高校以降に理科を学問として学んでいない人間が、本書をもとに考えたことを披瀝してみたい。

 本書では物理学の二大理論と形容される相対性理論と量子論とを融合して理論が展開されている。相対性理論が明らかにするマクロな世界と量子論が明らかにするミクロの世界との融合。理論の積み上げによって新しい理論を作り出すその構成は、ニュートンの言とされGoogle scholarのトップ画面でもお馴染みの「巨人の肩の上に立つ」を髣髴とさせる。先行研究をもとにして新しい理論を積み上げていくという科学的なスタンスはどの学問分野でも共通しており、美しい理論ほど概念的に把握し易いのだろう。

 さて、相対性理論を読むたびに想起することは構造主義、とりわけレヴィ=ストロースが思い浮かぶ。どちらも大掴みに捉えると「立ち位置を変えれば現象の解釈は変わる」ということを言っているのではないだろうか。ビジネスにおいても相対的な考え方は重要である。たとえば、他社のベストプラクティスを単に真似れば良いというわけではない。楠木先生の議論によれば、それぞれの会社に特有なビジネス環境に合わせ、戦略アイテムをストーリーとして整合させているのであり、その中から特定のアイテムを真似しても意味がないのである。

 その一方で、立ち位置によって現象の解釈は変われども、因果律が変わることがない、という特殊相対性理論の主張は興味深い。相対主義の度合いが過ぎると主張点が不明瞭になることがある。相対的に両論併記が多すぎると、なにもかもが玉虫色になってしまう、というような現象である。そうした中で上記の特殊相対性理論の主張を読むと、一つひとつの因果を積み上げることで何らかの影響を為すことは可能であるという希望の可能性を私は感じるのである。因果律の通った理論であるからこそ、それぞれを相対的に捉えることに意義が生じるのではないか。

<参考文献>
楠木建『ストーリーとしての競争戦略』東洋経済新報社、2010
Newton20057月号「決定版 相対性理論」ニュートンプレス、2005
Newton別冊「量子論 改訂版」ニュートンプレス、2009
内田樹『寝ながら学べる構造主義』文藝春秋社、2002





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